「レンズ収差」とは、レンズの特性により発生する収差(ズレや歪みなど)のことです。光学的なレンズにより発生するものですが、画質のチェックなどに必要になってくる豆知識をここでご紹介します。
レンズ収差の種類
レンズ収差の種類においては、「球面収差/コマ収差/非点収差/像面湾曲/歪曲収差」の「ザイデルの5収差」が有名です。しかし、ここではRAW現像時に補正できる
- シェーディング(周辺減光)
- 倍率色収差(周辺部の色ズレ)
- ディストーション(歪曲収差)
について解説します。
シェーディング(周辺減光)
デジタルカメラでレンズの絞り開放付近で写真を撮ると、画面の四隅が暗くなってしまうことがあります。これは「周辺減光」や「シェーディング」、「ヴィネット」などとも呼ばれる、デジタルカメラの場合にはレンズとイメージセンサーの特性によって発生するものです。
■周辺減光の発生原因
周辺減光とはその名の通りレンズの周辺が暗く写ってしまうことをいいます。まず、下記図をご覧ください。
緑の部分が、「CMOS」や「CCD」などと呼ばれているデジタルカメラのイメージセンサーです。レンズの周辺部分ではセンサーに対して光が斜めに当たっています。
イメージセンサーの中央部
下記図はイメージセンサーの中央部を拡大して見た模式図になります。
光はまっすぐに入射しているため、センサーの奥に配置されている受光部に対してそのまま届きます。受光部の手前に配線がありますがその影響が一番少ない状態です。
イメージセンサーの周辺部
イメージセンサー周辺部ではイメージセンサーに対して光が斜めに当たるため、配線に遮られてしまい奥にある受光部まで届く光の量が減ってしまいます。この角度が強くなるほど暗くなるので、写真で見ると周辺になればなるほど暗くなってしまうという事になります。これがシェーディング(周辺減光)の原因です。
フィルム写真では、イメージセンサーの電子配線のような光を阻害するものが無かったのであまり気になりませんでしたが、デジタル写真になってからは目立つようになってきました。
■シェーディングの補正
シェーディング(周辺減光)は写真編集ソフトやRAW現像ソフトで補正することができます。
▼RAW現像ソフトSILKYPIXシリーズの例
SILKYPIXでシェーディング(周辺減光)を補正するには「レンズ収差補正」にある「シェーディング(周辺光量)」で調整することができます。SILKYPIXについてはこちらをご覧ください。
▼シェーディング補正後
シェーディングを活かした写真作品
シェーディングは無い方がレンズの性能が良い証なので良いと思われる方もいらっしゃるとは思います。しかし、写真によっては見る人の視点を中央に集中させる効果があるため、補正しない、または、あえて周辺光量を落とした方が良い場合もあります。
▼シェーディング(周辺減光)を残した例
インスタグラムや写真変換アプリなどに「効果」としてあえて周辺減光させる機能があるのもそのためだと思います。「トンネル効果」などと呼ばれることもありますね。
倍率色収差
「倍率色収差」は画面周辺の輪郭部分で赤や緑の色ズレが発生してしまう収差です。
フィルム撮影ではあまり耳慣れない「倍率色収差」ですが、デジタルになってからは広角レンズの画面の隅のほうに強く出てしまい目立つ場合があります。
デジタル化される前のレンズなどでも強く出てしまうことがあります。
なぜこのような収差が起きるかというと、レンズを通って来た光がイメージセンサーに当たるまでに、RGBそれぞれの色の波長ごとに結像する像の位置が異なってしまう為です。具体的にどのような事かといいますと、下図をご覧下さい。
仮にこのような被写体を撮影したとします。倍率色収差の少ないレンズであれば、このままの状態で撮影されます。レンズを通った光はRGB(赤、緑、青)に分解されてイメージセンサーの同じ位置で結像します。
倍率色収差があるレンズですとイメージセンサー上では下記図のように記録されます。
倍率色収差の大きなレンズでは下記図のように画面周辺部で結像位置がずれてしまい、その結果が輪郭部分の縁取りとなって現れます。
■倍率色収差の補正
倍率色収差も写真編集ソフトやRAW現像ソフトで補正することができます。
▼RAW現像ソフトSILKYPIXシリーズの例
倍率色収差をSILKYPIXで補正するには「レンズ収差補正」にある「倍率色収差」で調整します。
▼倍率色収差補正後
ディストーション
ディストーションとはレンズの歪みの事で、広角レンズによくみられる「樽型歪み」や望遠レンズに見られる「糸巻型歪み」などが有名です。
▼「樽型歪み」
▼「糸巻型歪み」
この収差があるレンズで真っ直ぐな被写体を撮影した場合、線が歪曲してしまうため、不自然に見えてしまう場合があります。
■歪曲収差の補正
歪曲収差も写真編集ソフトやRAW現像ソフトで補正することができます。
▼RAW現像ソフトSILKYPIXシリーズの例
SILKYPIXで歪曲収差を補正するには「レンズ収差補正」にある「ディストーション」で調整します。
▼ディストーション補正前
▼ディストーション補正後
ディストーションは一般的に単焦点レンズよりズームレンズの方が出やすく、また、ズームレンズの場合、その焦点距離や撮影距離によっても歪曲率が異なるため、撮影条件ごとに異なる補正が必要となります。
ちなみに、SILKYPIXにはEXIFの撮影データを基にこのディストーションの補正を自動でおこなう「レンズプロファイル」という機能も搭載されています。詳しくはこちらをご覧ください。
このように、被写体によっては気になってしまうレンズ収差ですが、状況に応じて補正をおこなうことで皆様の作品のクオリティを高めることができます。
■SILKYPIXとは
「SILKYPIX Developer Studio」はデジタルカメラで撮影されたRAWデータから、思い通りの高品位な画像を現像するソフトです。パソコンの強力な演算能力を使用して、どこまで高品位の映像を得ることができるかを考え、今まで諦めていたデジタルカメラ特有のデメリットを解消しました。例えば、高彩度色境界における不自然なエッジ、微細構造部分に乗る偽色、高感度撮影における色ノイズなどを徹底的に抑制し、高解像度と高い色分離性能を両立させています。 目指しているのは、絹のような滑らかで自然な映像、SILKYPIXの名前の由来はそこにあります。
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