まめ知識

写真におけるホワイトバランスについて

電球や蛍光灯の照明下で撮影した際、オレンジや緑などの色が写真全体に強く色かぶりした経験のある方も多いのではないでしょうか?この環境光の色による影響を緩和し、色かぶりを補正するために、デジタルカメラやRAW現像ソフトには「ホワイトバランス」が搭載されています。

写真におけるホワイトバランスについて 写真におけるホワイトバランスについて

このページでは、ホワイトバランスの概念や写真撮影における使い方などをご紹介します。

 


■ホワイトバランスの基本的な役割

太陽光や電球など、撮影時の環境光にはそれぞれ色があります。

▼環境光の色の例

環境光の色

「ホワイトバランス(WB)」とは、撮影時の環境光の色による影響を補正し、本来白い被写体を白く写すための機能です。この機能を使うことで、光の色の影響を受けずに、被写体本来の色を再現することができます。

▼青かぶりした写真

青かぶりした写真

▼ホワイトバランスを合わせた例

ホワイトバランスを合わせた例

 

■色温度と色偏差

SILKYPIXのホワイトバランスで補正できる色かぶりの種類は「色温度」と「色偏差」の2種類です。

【色温度】

色温度

写真では主にオレンジ色~青色の色かぶりを調整するのに使われます。

この「色温度」の単位は「K(ケルビン)」といい、数値が低いとオレンジ色、数値が高いと青色の光であることを表しています。色温度では主に、日陰や曇りの日の「青かぶり」や、午後の日差しなど太陽光による色かぶりや電球による「赤かぶり」などを調整することができます。

【色偏差】

色偏差

蛍光灯やLEDライトなどの人工照明では緑やマゼンタなど、太陽光には無い色の偏りを持っています。色偏差とは主に人工照明下のグリーンやマゼンタの色かぶりを調整するのに使われます。

 

■「色温度」の名称の由来と概要

例えば、鉄などの物質を熱した際に温度が低い時には赤く光っていたものが、加熱を続け徐々に温度が高くなっていくと

赤黒 → オレンジ色 → 黄 → 白→ 青 に変化していきます。

色温度

勘の良い方だと色の「温度」と表記されることからわかる通り、色温度は熱エネルギーが光に変わる際の色を「K(ケルビン)」という単位で示しています。

厳密には「反射成分が全く無い物体(黒体)」を熱した際の色を表したもので「黒体放射」と呼ばれています。この黒体放射の色の変化を連続的に表したものが下記の図のような「黒体放射軌跡(黒体軌跡)」と呼ばれており、デジタルカメラやRAW現像ソフトの色温度調整では一般的に「黒体放射軌跡」に沿った補正がおこなわれるようになっています。

黒体放射軌跡

太陽や日陰などの自然光の色は、この黒体放射軌跡上に当てはまるため、「色温度」は主に自然光の補正で使われます。

代表的な光源の色温度

  • 晴天日陰  7000~7500K
  • 曇天    6000~6500K
  • 晴天    5000~6000K
  • 白色蛍光灯 4000~4200K
  • 白熱電球  2800~3200K

 

■色偏差は黒体放射軌跡からの色のズレ

蛍光灯(三波長)やLEDなどの照明は、一般的に「赤(R)・青(B)・緑(G)」の光に「希土類蛍光体」と呼ばれる物質を利用することで色合いを作っています。

そのため、特性によっては黒体放射軌跡上からズレてしまう場合が多くあります。下図を見ると、黒体放射軌跡から上にズレると「緑かぶり」が発生し、逆に下にズレると「マゼンタかぶり」が発生します。

黒体放射軌跡からの色のズレ

このように人工照明では、太陽光や自然光とは異なる色のズレが発生する場合があるので、それを調整するのが「色偏差」です。

 

■太陽光と蛍光灯の光の成分の違い

参考までに下図は人間の可視域(色の見える範囲)にどれだけ光の色の成分が含まれているかを示した「スペクトル分布図」になります。

▼太陽と蛍光灯のスペクトル分布図

スペクトル分布図_太陽光スペクトル分布図_蛍光灯

太陽光が紫~赤までバランスよく含まれているのに対して、蛍光灯は赤、緑、青 付近の色の成分だけが突出して多いのが確認できます。この違いはホワイトバランスだけではなく発色の違いにも表れます。ホワイトバランスを合わせても、蛍光灯で色が濁る場合があるのはここに原因があります。

 

■写真作品作りのためのホワイトバランス設定

上述したようにホワイトバランスは

  • 環境光の色味を取り除いて白い被写体を白く見せることで色かぶりを緩和させる
  • そうすることで被写体本来の色が再現される

以上が基本的な目的です。

▼青かぶり

青かぶりした写真

▼色かぶりなし

色かぶりなし

▼黄色かぶり

黄色かぶり

実際にカタログやお料理のメニューに使われる商品写真などでホワイトバランスがズレていて色かぶりしていた場合、その商品の正確な色は判断できないでしょう。

しかし、写真作品作りにおいて、必ずしも色かぶりを除去しなければならない訳ではありません。むしろ、ホワイトバランスを色表現のためのツールとして使用することで、作品のバリエーションや表現の幅も豊かになります。

 

■ホワイトバランスで光の色を表現する

ホワイトバランスで完全に色かぶりを除去した場合、その写真から感じる「光の色」は無色透明になります。

しかし、風景写真やスナップ写真など多くの写真作品の場合、その場所の光や空気感などに魅力を感じてシャッターを切る場合も多いのではないかと思います。その雰囲気を伝えるためにあえてホワイトバランスを意図的に調整し、その場の光の色を写真上で表現すると、作品の魅力が引き立つこともあります。

作品作りにおいて、ホワイトバランスは皆さんが見た、感じた「光の色を表現するツール」として、自由に使うことができます。

▼ホワイトバランス:電球

ホワイトバランス:電球

▼ホワイトバランス:太陽光

ホワイトバランス:太陽光

クラッシックな雰囲気が魅力的なお店の写真です。

おそらくお店のオーナー様がインテリアに合わせてあえて電球色の照明を選んだものです。この場合、ホワイトバランスから「電球」を選んでしまうと電球の色味がなくなり(色かぶりが取れるとも言いますが)蛍光灯の下で撮影したような味気ない写真になってしまいます。

このように演出照明などにより、「その場の光の色」が魅力的な被写体の場合はその雰囲気が表現できるようなホワイトバランスをセッティングすることがおすすめです。

 

光の色

こちらは朝方、日の出直後の写真です。明け方や夕暮れ時などは、刻一刻と変わってゆく空や光の色が魅力的な被写体の代表的な例です。

この場合もホワイトバランスをオートホワイトバランスなどに設定すると太陽の色味が弱くなり、作品の雰囲気が弱くなってしまう場合があります。

ホワイトバランス調整例

この例ではホワイトバランスをレンズ前に装着するカラーフィルターと同じような効果として様々なバリエーションで仕上げた例です。太陽の赤さを表現したいのか、明け方の青さを表現したいのか?皆さんはどの写真がお好みでしょうか?色表現で使う場合のホワイトバランス設定には正解が無く、ある意味個性が出る部分なのかも知れません。

 

■色偏差のズレは色の濁りや不自然さに繋がるので注意が必要

先ほどご紹介した通り「色偏差」は主に「人工照明」などの色かぶりを緩和する機能です。そのため、風景写真など自然光での撮影で色偏差がズレてしまっていると太陽光には無い不自然な色味になってしまう場合があります。

▼緑かぶり、色かぶりなし、マゼンタかぶりしている写真の例

色偏差ズレの例

空の青やアスファルトの色に着目し、緑やマゼンタの色づきがあった場合は色偏差を調整してください。

写真はカメラで光を捉え、被写体の魅力やその時の心象などを表現する芸術です。ホワイトバランスではその光の「色」で様々な表現の可能性がありますので、色かぶりの緩和だけでなく写真表現のツールとしても、ぜひ自由にご活用ください。

 


■SILKYPIXとは

SILKYPIX

SILKYPIXシリーズはデジタルカメラで撮影された「RAWデータ」を高画質に編集し、美しい写真に仕上げる事のできる純国産の「RAW現像ソフト」です。カメラメーカー各社のRAWデータ※1に対応しており、多くのプロカメラマンや写真愛好家から支持されています。また、カメラ同梱のソフトウェアとして多くのカメラメーカーからもご採用いただいております。

※1 対応カメラについては、各製品の詳細ページにてご確認ください。

▼製品紹介と基本操作方法を動画でチェック!

基本調整方法のご紹介時に、ホワイトバランスの簡単な調整方法についてもご紹介しております。ぜひ皆さんの写真でお試しください!